Artisan: Italy & Japan
イタリア文化会館で行なわれた奥山清行氏の講演に参加。
奥山氏はフェラーリのデザインを手掛けるPiningarina(ピニンファリーナ社)で長期に渡りデザインを統括。現在は出身地:山形で、山形の伝統工芸「山形工房」を立ち上げ、プロデュース中。
イタリアではものをつくるとき、あくまでも重要なのは「”テーマ”を追求する事」。
日本は、落ち度の無いものづくり」が目にとまる。
テーマを追求するには、もちろん妥協する事もあるが、100%の”もの”を作ることは難しい。
テーマ性を持つ人に何かを訴える”もの”が出来上がり、”落ち度の無いもの”を作ろうとする人は、機能性を重視していく中で”テーマ”を妥協してしまうことになる・・・。
そしてできあがった”もの”は機能性には優れているがテーマ性が無い”もの”が出来上がる。
奥山氏は”日本のものづくり”を決して否定している訳ではなく、”ニーズの違いだ”と説明されていた。
興味深かったのは、「イタリアと日本の似ている点」とは
現場で働く職人さんの技術が高いのはイタリアと日本くらい。
ドイツやアメリカなどは、現場で働く人は「職人」ではなく「作業をする人」だとか。
イタリア・日本ともに伝統工芸が多くあり、そしてその技術力の高さも知られ、この「現場力の強さにもっと目を向けるべきだ」と。
講演はイタリアのものづくりが良いとか、日本のものづくりが悪い、とかの話ではなく、もののつくり方の違い、そしてイタリアから学ぶ点という内容であった。
奥山氏の着眼点の鋭さやフェラーリのマーケティングなど興味深い。
講演の翌日に、食事の約束をしていたデザイナーの友人が雑誌の切抜きを持ってきてくれた。
「どんなに立派なデザイン論を掲げところで、デザインする側の人間に精神的な安定がなければいいカタチなんて絶対に造れない。
デザイナーが朝8時から夜の12時まで会社で働かなければ成立しないような組織の中からは、いま以上の質の高いデザインはまず生まれてこない。
組織とは切り離された自分のための時間がきちんとあって、本がたくさん読めて、音楽が聴けてというような個人としての隙間がたくさんあって、初めて良いデザインを生み出す土壌が生まれてくる。
これは、現在ドイツでアウディのデザインを手掛ける和田 智氏の言葉であった。
お二人の論点は、SUGANOが日々感じ体現する観点と一致していた。
日々の取り組みに真摯に向き合う中で、何を大切にし取り組むかこそ大切な観点だ。



photographer : Kei SUGANO
出典 : excite blog